冬のニオイ
第27章 Asterisk
【翔side】
そうだ。
俺はあの人が大好きで、大した用もないのに探しては話しかけてた。
そうするといつも、あの人は不思議そうな顔でキョトンと俺を見て。
『翔くんは、なんでオイラに構うの?
オイラなんて面白い話も出来ないし、翔くんと全然違うのに……つまんないでしょ?』
困った顔で眉を下げる。
触れたくて、傍に居たくて。
柔らかな頬を初めて掌で包んだとき、思わず言ってしまった言葉。
貴方が好きなんだ、って。
ずっと、貴方のことが好きだったんだ、って。
ああ、落ちる。
落ちる。
落ちていく。
はにかんだ笑い方。
言葉が苦手で、会話の反応がおっとりしてて。
聞いて、って俺の服の袖を掴みながら、一生懸命話してくれる、あの口調。
拗ねた時の尖らせた唇も、指が長くて美しい手も。
胸にある黒子や、滑らかな肌も。
膝が入ったダンサーの脚も。
何もかも愛してた。
愛してる。
今も。
今も。
『しょおくん……』
舌っ足らずな甘い口調で俺を呼んで、振り仰ぐときの嬉しそうな顔。
『オイラでいいの……?』
不安そうに何度も訊くから、その度に抱きしめてキスをした。
それで伝わってると思ってた。
『言ったら翔くん、オイラのこと信じてくれんの?』
『翔くん、オイラのこと許してくれる?』
『探してくれてっ、ありがとっ……』
そうだ、あの人の名は。
智。
俺が誰よりも愛しく想う人。
大野智。
落ちながら、ようやく俺は思い出していた。
そうだ。
俺はあの人が大好きで、大した用もないのに探しては話しかけてた。
そうするといつも、あの人は不思議そうな顔でキョトンと俺を見て。
『翔くんは、なんでオイラに構うの?
オイラなんて面白い話も出来ないし、翔くんと全然違うのに……つまんないでしょ?』
困った顔で眉を下げる。
触れたくて、傍に居たくて。
柔らかな頬を初めて掌で包んだとき、思わず言ってしまった言葉。
貴方が好きなんだ、って。
ずっと、貴方のことが好きだったんだ、って。
ああ、落ちる。
落ちる。
落ちていく。
はにかんだ笑い方。
言葉が苦手で、会話の反応がおっとりしてて。
聞いて、って俺の服の袖を掴みながら、一生懸命話してくれる、あの口調。
拗ねた時の尖らせた唇も、指が長くて美しい手も。
胸にある黒子や、滑らかな肌も。
膝が入ったダンサーの脚も。
何もかも愛してた。
愛してる。
今も。
今も。
『しょおくん……』
舌っ足らずな甘い口調で俺を呼んで、振り仰ぐときの嬉しそうな顔。
『オイラでいいの……?』
不安そうに何度も訊くから、その度に抱きしめてキスをした。
それで伝わってると思ってた。
『言ったら翔くん、オイラのこと信じてくれんの?』
『翔くん、オイラのこと許してくれる?』
『探してくれてっ、ありがとっ……』
そうだ、あの人の名は。
智。
俺が誰よりも愛しく想う人。
大野智。
落ちながら、ようやく俺は思い出していた。