冬のニオイ
第13章 Cool
【潤side】
夕方には昨日会ったキタムラさんが迎えに来るって言うし、その時に智と話すだろうから自分も同席させてもらおうと算段をつけた。
「ほんと、今時の子供って凄いよね」
智が子供の小さな肩を抱いて頭を撫でてる。
子供は恥ずかしそうに、唇を結んで下を向いてた。
智が子供と一緒に居るところは初めて見たけど、常に子供から視線を外さない。
お姉さんに子供が居るって言ってたから、扱いに慣れてるのかな。
一生懸命話を聞いてあげようとして、ずっと気にかけているのがわかる。
「すごくないよ。
むかし、よくきてたとこだから」
昔よく来てた、って普通に言うのが可笑しくて、思わずウケて大笑いした。
智も可笑しそうに笑ってる。
最初は智と二人で会うつもりだったのを邪魔されてちょっと面倒くさいと思ったけど、これはこれで中々楽しいかも、と俺は思い直した。
広い園内では所々で移動式のカフェが出てて、そこで3人分の昼食を買う。
「あっちでたべようよ」
タツオミが智の手を引いて連れて行ったベンチは開けたスペースの目の前。
そこでは、練習中なのかな。ダンスパフォーマンスが行われていた。
華やかな衣装を身につけた若い連中が、曲に合わせてアクロバットなんかもやってる。
その様子に気づいた智が驚いた顔で口を開けた。
「まだやってたんだ……」
智の手を握った子供が、下から智を見上げるように見つめてる。
まるで見守るみたいに。
愛しくて仕方がないみたいに。
子供らしくない視線だ。
懐かしい遠い日の思い出を語る、老いた人のようにも見えた。
「おぼえてる?」
問いかけるタツオミに智が答える。
「あ、うん、びっくりした。
タツオミ、知ってたの?」
「……うん」
視線を合わせて微笑みあう二人に、俺は何故だか説明できない不快感を覚える。
この二人、前からの知り合いなのか?
「何? どゆこと?」
言葉に感情が滲まないよう気をつけながら、なるべく何でもなく聞こえるように尋ねる。
二人はそこで揃って、一瞬、バツが悪いような顔をした。
「あ、潤、ごめんね。
ここ、昔よく来てたんだよ」
さっき子供が言ったのと同じセリフだ。
「お兄さん、しってる?
さとしくんは、おどりがすごいんだよ!」
タツオミは俺にそう言ってから、嬉しくて仕方ないみたいに、誇らしそうに智を見上げた。
夕方には昨日会ったキタムラさんが迎えに来るって言うし、その時に智と話すだろうから自分も同席させてもらおうと算段をつけた。
「ほんと、今時の子供って凄いよね」
智が子供の小さな肩を抱いて頭を撫でてる。
子供は恥ずかしそうに、唇を結んで下を向いてた。
智が子供と一緒に居るところは初めて見たけど、常に子供から視線を外さない。
お姉さんに子供が居るって言ってたから、扱いに慣れてるのかな。
一生懸命話を聞いてあげようとして、ずっと気にかけているのがわかる。
「すごくないよ。
むかし、よくきてたとこだから」
昔よく来てた、って普通に言うのが可笑しくて、思わずウケて大笑いした。
智も可笑しそうに笑ってる。
最初は智と二人で会うつもりだったのを邪魔されてちょっと面倒くさいと思ったけど、これはこれで中々楽しいかも、と俺は思い直した。
広い園内では所々で移動式のカフェが出てて、そこで3人分の昼食を買う。
「あっちでたべようよ」
タツオミが智の手を引いて連れて行ったベンチは開けたスペースの目の前。
そこでは、練習中なのかな。ダンスパフォーマンスが行われていた。
華やかな衣装を身につけた若い連中が、曲に合わせてアクロバットなんかもやってる。
その様子に気づいた智が驚いた顔で口を開けた。
「まだやってたんだ……」
智の手を握った子供が、下から智を見上げるように見つめてる。
まるで見守るみたいに。
愛しくて仕方がないみたいに。
子供らしくない視線だ。
懐かしい遠い日の思い出を語る、老いた人のようにも見えた。
「おぼえてる?」
問いかけるタツオミに智が答える。
「あ、うん、びっくりした。
タツオミ、知ってたの?」
「……うん」
視線を合わせて微笑みあう二人に、俺は何故だか説明できない不快感を覚える。
この二人、前からの知り合いなのか?
「何? どゆこと?」
言葉に感情が滲まないよう気をつけながら、なるべく何でもなく聞こえるように尋ねる。
二人はそこで揃って、一瞬、バツが悪いような顔をした。
「あ、潤、ごめんね。
ここ、昔よく来てたんだよ」
さっき子供が言ったのと同じセリフだ。
「お兄さん、しってる?
さとしくんは、おどりがすごいんだよ!」
タツオミは俺にそう言ってから、嬉しくて仕方ないみたいに、誇らしそうに智を見上げた。