テキストサイズ

冬のニオイ

第13章 Cool

【潤side】

「あなた全然食べてないじゃない。
こっち食べてみ?
ザワークラウト、うまいから」

俺が言うと子供も智の方を向く。

「さとしくん、これバジルソースだよ。
イカとエビが入ってる。
これすきだよ、ぜったい」

二人から言われた智は困った顔で。
話題を変えるみたいに、自分の目の前にある卵サンドを持ち上げる。

「オイラ、まだこっち食べてないから。
このパン、いい匂いするね?」

いい匂い、って卵サンドなのに(笑)。
バターの香りかな?

鼻にパンを持って行って匂いを嗅いだ智は、サンドをくっつけてしまって。
鼻の頭に黄色いディップが付いた。

「あっ」

ぷっ、可愛い。

「はははっ!
さとしくん、どんだけキュートなんだよ!!」

タツオミに遠慮なく大笑いされて智が苦笑しながら俯く。
俺は手を伸ばして智の鼻の頭に触れると、人差し指で卵をすくって、そのまま自分の口に入れた。

「……潤」

子供の前で止めろよ、って意味だろう。
照れながらも、ちょっと非難する響きで名前を呼ばれた。

「だって可愛いから」

触れるチャンスは逃しませんけど何か?

「可愛くないよ、おっさんなんだから。
アラフォーなんだよ?」

「ふふっ。十分可愛いですよ」

ブツブツ言いながら、ウェットティシュで鼻を拭いてる智を見つめてたら、視線を感じた。
タツオミが、また子供らしくない静かな顔をして、じーっと俺を見てた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ