
冬のニオイ
第15章 Carry on
【智side】
オイラが自分で、翔君に会ったらいけない、会う事なんかできない、って思ってるのとは違う。
死んじゃったら、もう絶対に、何をどうしたって会えない。
車から降ろしてもらおうとして、重い体を持ち上げる。
ドアロックを解こうとしたけど指が痺れて力が入らない。
両手の指が勝手に丸まって、伸ばそうと思うのに震えてままならない。
何度もロックを触ってみるけど、何回やっても解除できないんだ。
「うっ……うぅ……開けて……。
開けろ……あけろよ……」
翔くん、オイラに会おうとしてたの?
なんで?
だって翔君はきっと、とっくに結婚してて。
もう子供もいて、いいお父さんになってて。
仕事もバリバリやって、幸せに生きてるって。
嘘だよ。
あの、血の跡。
絶対に違う。
翔くんじゃない。
「智っ、車寄せるからっ。
大丈夫だから無茶しないでっ」
ハンドルを切った勢いで、力の入らない体がまたシートに倒れる。
車が止まってドアが開いた。
降りようと思うのにオイラはもう起き上がれなかった。
「智っ、どうしたいっ?
どうして欲しいか言ってっ」
潤がオイラの上に覆いかぶさるようにして何か言ってる。
言葉は聞こえてるけど、意味がわかんない。
「しょおくん、し、死んじゃうの……?」
潤は辛そうな顔で大きく溜息を吐いてから、オイラの頭を撫でた。
「ちゃんと話を聞かないうちに出て来た俺が悪いね。
キタムラさんに電話するから、ちょっと待って」
片手でスマホを持ちながら、もう片方の手でオイラの手を握って指をさすってくれてた。
取りあえずオイラの言う事をきいてくれそうな気配を感じ取り、ホッとして目を閉じた。
「じゃぁ、その櫻井さんという方の容態は、すぐにどうにかなるってわけではないんですよね?
わかりました。
智、今のところは安定してるって」
翔くん、死なない?
目をつむったまま、何とか潤に訊いてみる。
聞こえるか心配だったけど返事があった。
「大丈夫だって。良かったね。
何かあったらすぐ連絡してくれるって言ってる。
見舞いに行くなら病室に入れるようにするって。
でも智が風邪ならお見舞いは遠慮して、って。
インフルかもしれないでしょ?
わかる?
智が病気だとお見舞いに行けないから、今日はやめよう。
ね?」
わかった、って。
頷いたところで、スッと意識がなくなった。
オイラが自分で、翔君に会ったらいけない、会う事なんかできない、って思ってるのとは違う。
死んじゃったら、もう絶対に、何をどうしたって会えない。
車から降ろしてもらおうとして、重い体を持ち上げる。
ドアロックを解こうとしたけど指が痺れて力が入らない。
両手の指が勝手に丸まって、伸ばそうと思うのに震えてままならない。
何度もロックを触ってみるけど、何回やっても解除できないんだ。
「うっ……うぅ……開けて……。
開けろ……あけろよ……」
翔くん、オイラに会おうとしてたの?
なんで?
だって翔君はきっと、とっくに結婚してて。
もう子供もいて、いいお父さんになってて。
仕事もバリバリやって、幸せに生きてるって。
嘘だよ。
あの、血の跡。
絶対に違う。
翔くんじゃない。
「智っ、車寄せるからっ。
大丈夫だから無茶しないでっ」
ハンドルを切った勢いで、力の入らない体がまたシートに倒れる。
車が止まってドアが開いた。
降りようと思うのにオイラはもう起き上がれなかった。
「智っ、どうしたいっ?
どうして欲しいか言ってっ」
潤がオイラの上に覆いかぶさるようにして何か言ってる。
言葉は聞こえてるけど、意味がわかんない。
「しょおくん、し、死んじゃうの……?」
潤は辛そうな顔で大きく溜息を吐いてから、オイラの頭を撫でた。
「ちゃんと話を聞かないうちに出て来た俺が悪いね。
キタムラさんに電話するから、ちょっと待って」
片手でスマホを持ちながら、もう片方の手でオイラの手を握って指をさすってくれてた。
取りあえずオイラの言う事をきいてくれそうな気配を感じ取り、ホッとして目を閉じた。
「じゃぁ、その櫻井さんという方の容態は、すぐにどうにかなるってわけではないんですよね?
わかりました。
智、今のところは安定してるって」
翔くん、死なない?
目をつむったまま、何とか潤に訊いてみる。
聞こえるか心配だったけど返事があった。
「大丈夫だって。良かったね。
何かあったらすぐ連絡してくれるって言ってる。
見舞いに行くなら病室に入れるようにするって。
でも智が風邪ならお見舞いは遠慮して、って。
インフルかもしれないでしょ?
わかる?
智が病気だとお見舞いに行けないから、今日はやめよう。
ね?」
わかった、って。
頷いたところで、スッと意識がなくなった。
