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美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

食器棚からお皿を持って来て、拓人さんに渡すと、勢いよくピーマンを更に盛りつける。

「よくピーマンの肉詰めなんて、思い立ったな。」

「ああ、お母さんが好きな料理だったから。」

言ってハッとした。

「ごめんなさい。」

「何を謝る?」

「だって、お母さんの事、思い出すの辛いでしょう?」

愛する人を亡くすって、そんな簡単に立ち直れないと思うんだ。

こんなコブ付きの母と結婚した拓人さんは、相当母の事を愛していたのだと思う。

「もう辛くないよ。」

「たっくん。」

「加純は、お母さん似だからね。加純を見ていると、お母さんを思い出す。」

胸にグサッと突き刺さった。

拓人さんは、私を見る度に、お母さんを思い出していたの?

「こんな時、娘がいるといいよな。」

「うん。」

私は、無理に笑顔を作った。

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