テキストサイズ

美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

普段は一人で夕食を作る私にも、週末には特別な人が来る。

「こんにちは。」

その人は、毎回たくさんの食材を持って、家にやってくる。

「加純ちゃん?いないの?」

家の合鍵を持っているから、私が出なくても、家に入って来れる。

「ホント、不愛想な子ね。」

キッチンから聞こえてくる声に、私はベッドから起き上がった。

部屋のドアを開けて、キッチンへ行くと、その人は冷蔵庫に食材を入れていた。

いつも使っているキッチンを、我が物のように使っている。

私は、この人をあまり好きではない。

「きゃっ!」

ふと後ろを見たその人は、驚いてキャベツを落とした。

「いるならいるって言ってよ。」

胸を撫で下ろすその人の名前は、“亜里沙”さんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ