テキストサイズ

美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

「できたわよ。加純ちゃん。」

さっきまで、不愛想な子とか言ってたくせに。

「加純、ありがとうは?」

「ありがとう。」

エプロンを着けた亜里沙さんが、料理を運んでくれる。

「いたただきます。」

一口食べると、うん。悔しいけれど、美味しい。

「どう?加純ちゃん。美味しい?」

「まあまあ。」

亜里沙さんが、不機嫌になる。

「また、加純は。美味しいだろ?正直じゃないな。」

拓人さんには、すっかり私の心の声、バレてるし。

そこが、拓人さんの憎いところなんだけどさ。

「ご馳走様でした。」

早々に切り上げて、私は立ち上がった。

「もう行くのか?加純。亜里沙と少し話をしたらどうだ?」

「いい。話す事ないし。」

亜里沙さんは、傷ついた顔をしている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ