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美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

優しそうな亜里沙さんに、私は大きな声を出した。

「どうした?加純?」

拓人さんが私達の元にやってきた。

私の名前を呼んだのに、立っているのは、亜里沙さんの隣。

まったく、つくづく私は邪魔者だって思い知らされる。

「二人で出かけて来なよ。私に遠慮しないで、デートした方がいいよ。」

私は無理に笑顔を作った。

「……行こう、亜里沙。」

「うん。」

二人は私の偽の笑顔を信じて、家の外に出て行った。

「はははっ……」

私はリビングで、膝を降ろした。

「なんで私、ここにいるんだろう。」

一人で暮らせば、こんな思いしなくて済むのかな。

でもここは、お母さんの思い出が残っていて、私にはまだ離れられないよ。

「んぐっ……」

涙と鼻水が止まらない。

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