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美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

私、なんでこんなに泣いているんだ?

「辛いよ……」

そう言葉を吐いた時だ。

後ろから抱きしめてくれる温もりがあった。

「ごめんな、加純。」

拓人さんの声が、耳元で聞こえる。

「おまえの優しさに、俺、甘えていた。こんなに辛い思いをさせてるなんて、分からずに。」

「たっくん……」

拓人さんの温もりは、優しい。

「ほら、顔を拭いて。」

近くにあったティッシュの箱から、数枚取ると、拓人さんは私の顔をゴシゴシと拭き始めた。

「亜里沙さんと、結婚するの?」

私は、思わず聞いてしまった。

「そうなるかもしれない。」

胸がズキズキする。

「でも、加純が結婚するまで、俺は再婚しない。」

「えっ?」

ティッシュがゴミ箱に捨てられると、そこには拓人さんの優しい笑顔があった。

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