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美しくて残酷な世界

第2章 イラダチ

家での生活がそんなんだから、学校の授業も、身が入らない。

「加純。最近、授業中ぼーっとしているね。」

「うん。」

廊下にあるロッカーの前で、さっちゃんと話していた。

「どうしたの?勉強頑張って、お父さんに褒めて貰いたいんでしょ。」

ああ、そうだと忘れていた自分に気づく。

「さっちゃん。」

「なあに?」

「私、辛い。」

さっちゃんが、背中をなでなでしてくれる。

「加純が辛いのは、お父さんの事だよね。」

うんと頷いた。

「叶わない恋か。いっそ、忘れちゃったら。」

「そうだよね。その方が辛い事、全部忘れるよね。」

恋は知らないうちにやってくる、風邪みたいなものだ。

治れば辛い事も、ベッドの中で泣く事もなくなる。

「そうだ。男紹介しようか。」

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