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美しくて残酷な世界

第2章 イラダチ

でも、この日は違った。

玄関の鍵が開き、早めに拓人さんが帰ってきたのだ。

「ただいま。」

まるで私が家にいるのが当たり前のように、「ただいま。」って言う。

「うわっ!」

制服姿でリビングにボーっと立ち尽くす私を見て、拓人さんは驚いたみたい。

「帰ってるんだったら、おかえりなさいくらい言ったらどうだ。」

その言い方に、苛立った。

「自分こそ、こんな時間に帰って来て、仕事でなんかやらかしたの?」

嫌みの一つでも言いたかった。

「時短になったんだよ。当分。」

「へえーそう。」

ソファーに座った拓人さんを見て、ふと修也君の事を言おうと思った。

「私、男の子、紹介された。」

「えっ……いつ?」

「今日。」

拓人さんは、少し困っていた。

「……付き合うのか。」

「うん。」

私は返事をすると、自分の部屋に走って行った。

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