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美しくて残酷な世界

第3章 嫉妬

修也君が帰った後、私はキッチンに立った。

いつの間にか着替えを終えた拓人さんが、冷蔵庫を開けた。

「今日は何作るの?」

「今日は、肉じゃが作ろうと思って。」

「おっ!いいね。」

この前、肉じゃが食べたいって、拓人さんが言ってたの、思い出したんだ。

「今日来た、洞口君だっけ?」

「うん。」

「礼儀正しくて、いい子だったね。」

それを聞いて私は、嬉しくなった。

「そうか。こうやって、加純は俺の元を、離れていくんだな。」

包丁を持つ手が止まった。

「娘を持つ父親って、こういう気持ちなんだなって、つくづく思ったよ。」

「私は、たっくんの元を離れないよ。」

拓人さんが、私を見た。

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