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美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

「さっちゃん、私行ってくる。」

「ほーい。」

教室を出て、廊下を走って、階段を駆け降り、靴を履いて外に出た。

待ってて。

今すぐその胸に飛び込むから。

校門まで走って、はぁはぁと息を切らしていると、一台の車が停まった。

「加純。」

顔を上げると、拓人さんが車から腕を出していた。

「ほら、弁当。」

「ありがとう。たっくん。」

もちろん、拓人さんの手作り。

それも計算上。

私は拓人さんの手を焼かせたいのだ。

すると、車を通り過ぎる女子達が、キャーキャー騒ぐ。

「かっこいい。」

「あの人、前もここに車停めてたよね。誰かのお兄さんなのかな。」

そう。高校生の親としては、35歳とまだ若い拓人さんは、かっこいいと噂の人。

あんまり見ないで。

私の拓人さんなんだから。

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