テキストサイズ

美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

「じゃあ、頑張って勉強するんだぞ。」

「うん。たっくんもお仕事頑張って。」

「はいはい。」

私だけに手を振りながら、拓人さんは去って行く。

渡されたお弁当が、温かい。

「たっくん……」


たっくんと呼ぶようになったのは、母が拓人さんを“お父さん”と呼べないだろうと、考えてくれたから。

それ以来、私は6年間。

拓人さんをお父さんと呼んだ事がない。


「お母さん、ごめんね。」

拓人さんへの気持ちを噛み締める度に、私は心の中で、母に謝った。

母が愛した拓人さん。

胸が引き裂かれそうに切ないけれど、私は拓人さんに恋をしている。


この恋は、罪でしょうか。

義父に、母の再婚相手に恋をするなんて、間違っているんでしょうか。

でも止められない。 拓人さんへの想いを。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ