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美しくて残酷な世界

第1章 もどかしい

学校から帰って来た家には、誰もいない。

母が死んでからそうだったから、もう慣れた。

「勉強しよう。」

好きな拓人さんに、成績が悪い生徒の親になんかさせたくない。

私は高校になって、猛勉強を始めた。

赤点なんか取りたくない。

拓人さんに、頭の悪い子なんて、思われたくない。

三者面談の時だって、成績が悪いなんて言われたくない。

拓人さんの前では、いい子でいたい。

「よくやった。」って誉められたい。

気づけばノートに、涙が零れていた。

「たっくん……」

その名前を呼ぶ度に、胸がきゅっと締め付けられる。

どうすれば、拓人さんの側に、ずっといられるのだろう。

そんな事ばかり、考えている。

「これじゃあ、勉強できない。」

はぁーっと、ため息をついた。

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