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美しくて残酷な世界

第5章 誰にも言えない

さっちゃんの家に着くと、お母さんも快く受け入れてくれた。

「家が大変なんですって?しばらくはウチに泊まっていいからね。」

「ありがとうございます。」

私は頭を下げて、さっちゃんの部屋に行った。

「それで?お父さんからは、何て言われたの?」

「何も言われてない。」

「ええ?そんなの生殺しじゃん。」

さっちゃんのいい方に、思わず笑ってしまった。

「だって、どう接したらいいか、分かんないよね。」

「そうなんだ。今日なんてさ、家に着いた途端、シャワーなんか浴びちゃって。」

そして、家を出て行く前の、名前を呼んでくれた時。


ー 加純 -


娘として呼んでくれたんじゃなくて、一人の人間として、呼んでくれた気がした。

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