【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第2章 おやじさん
「未成年が酒飲んで外ふらついてたら補導されるぞ。停学処分になるかも知れんし、事故や事件に巻き込まれることだってあるんだ。気をつけんと」
「すみません」
「なんであんな正体無くなるほど飲んだのさ」
「色々あって」
「色々か」
「今、何時ですか」
「七時過ぎだな。一晩帰って来なくて、家の人心配してるんじゃねえか」
「いえ、別に」
「別にじゃねえだろうよ」
「親は夜勤で、帰って来るのは昼頃なんで」
嘘を言った。
「そうか。ならまあいいけどよ」
じいさんは今度は顔を洗い
首にかけていた手拭いで顔を拭きながら
「お前さん名前なんていうの。俺は和田真治(わだまさじ)ってんだ。みんなおやじさんとか会長とか呼ぶわ」
その言葉に
ジムの名前が和田ボクシングジムだったことを思い出す。
あのジムの創設者ということか
元はボクサーなんだろうか
「俺は、橘修斗といいます」
「修斗。橘修斗。いい名前だな。かっこいいなおい。顔も男前だし、芸能人みてえだな」
「あの、すみません、水もらっていいですか」
俺は喉の渇きを感じて立ち上がった。