【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第2章 おやじさん
「おう。ペットボトルの水なんてねえから台所の蛇口の水な。そのへんのコップ適当に使えよ」
「はい」
薄汚れた洗い籠の中のグラスを手に取る。
掃除が行き届いているとは言い難い台所周り
そういえば奥さんの姿が見えない
独り暮らしなのかもしれない。
「しかしお前さんでけえよな。運ぶのなかなか大変だったわ」
「そうですよね、すみません」
流しに立った俺を見上げるじいさんはたぶん百六十センチくらい
前から思っていたがニホンザルに似た顔立ち
皺はあれどすべすべとした艶のある肌をしていて
俺を見上げる小さな目は輝いている。
「修斗、お前何センチあんの」
「百八十くらいです」
「はー、でかいな。年はいくつよ」
「十四です」
「十四!中学生か!」
じいさんは小さな目を見開いた。
「はい。中三です」
「すげえな、十四でこの体か!でかいから高校生かと思ってたら、中学生だったんか!」
感嘆の声を上げながら俺の体を眺めまわし
パンパンと腕や背中を叩く。
「本当いい体してるわ。なんのスポーツしてる?毎日走ってるもんなあ」
「サッカーを‥‥していましたが、今は何も」
「何もしてねえのか。そりゃ宝の持ち腐れだ。なんでサッカーやめた?」
「色々あって」
「また色々か。そうか」
まあいいや、とじいさんは俺の背中をまたパンと叩いた。
「修斗、飯でも食うか。飯ったって食パンと牛乳だけどよ」