【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第2章 おやじさん
トーストしただけで何も塗っていない食パンと牛乳
畳の上のちゃぶ台に向かい合って座り
じいさんと一緒にしばらく二人黙って食って
「あの、和田さん」
「和田さんなんてくすぐってえよ。おやじさんでいいよ」
「じゃあ、おやじさん」
「おう」
おやじさん
口にしたこの瞬間から
じいさんはおやじさんになった。
「住み込みで働ける仕事って、知りませんか」
「え?学校どうすんだよ」
「別にやめたっていいんで」
おやじさんはもぐもぐと口を動かしながら俺の顔をじっと見る。
「世間にはそれなりにあるよ、住み込みの仕事は。寮があるような会社だろ。でもお前年が若すぎるもの。せめて十五じゃねえと。あと少しなんだから中学は出ておけよ」
「そうですか」
「なんで住み込みしたいんだよ。家にいたくねえんか」
「はい」
「なんでよ」
「色々あって」
「ふうん」
おやじさんは牛乳を飲み干した。
同じペースで食べていた俺も食べ終わり
ごちそうさまでした、と頭を下げた。