【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第3章 回想
住んでいたマンションから一駅離れた場所に病院兼住居の立派な家を建て
俺達家族の新生活が始まった。
コンサルを入れ入念なマーケティングと資金計画で始まったはずの開業
それが失敗だったと家族全員が思い始めるまで
時間はさほどかからなかった。
俺はサッカーに明け暮れていたから家のことも病院のことも気にかけてはいなかったが
客が少ない
いつも空いている
そういった話を母親や姉達から聞くようになった。
高三と高一の二人の姉はどちらも優秀で
父親の影響で医者になることを志していた。
将来的にはこの二人の姉が病院を継ぐことまで計画の内だったこともあって
俺以外の家族は皆病院経営の動向にピリピリしていた。
特に母親は始終あれこれ言っていた。
「いつになったら患者さんが増えるのかしら。お父さんに言うとすぐ怒って喧嘩になっちゃうからあんまり言えないんだけど、売り上げが全然伸びないの。やっぱり立地が良くなかったみたい。お父さんに開業医は向かなかったのよ」
正直俺にはぴんと来ていなかった。
医者や病院はとても儲かるという認識が俺の中にはあったから
空いていれば多少稼ぎは減るのかも知れないが基本的には儲かっているのだろうし
父親も仕事が楽でちょうどいいじゃないか
そう言ったら馬鹿を言うなと女三人の総攻撃にあった。
お前は何もわかってない
サッカーのことしか考えてない
病院が潰れたらどうする
女三人揃ってどいつもこいつもうるさい。
うんざりして俺はリビングに寄りつかなくなっていった。