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【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥

第3章 回想


そんなことよりも俺は中学生になってから新しく加入したジュニアユースチームでいかに最速でレギュラーを取るか
最速で日本代表になるにはどうしたらいいのか
サッカー留学はしたほうがいいのか
だったら今のうちに英会話の塾にでも行っておいたほうがいいのか

とにかく頭の中はサッカーのことでいっぱいだった。


「サッカーのことしか考えてなくて、何が悪い」


日本代表になってワールドカップへ行く為に俺にはやるべきことが山のようにあるんだ
心配だと気を揉んでる暇があるならビラ配りのひとつでもしたらどうだ
口ばかりの母と姉を俺は内心軽蔑していた。

俺の新生活の順調さとはまったく逆に
病院の経営は下降線を辿り続けた。

父親が自動車の追突事故にあい
休院せざるを得ない日が続いたことも不運だった。

具体的な数字を聞かされることはなかったが
借金は確実に膨らんでいるようだった。

夜中に始まる母親と父親のいさかい
リビングから漏れ聞こえてくる声から
母親と父親の関係が日に日に悪化していくのがわかった。

口論は父親の怒声やわめき声
やがて物を投げる音や何かが割れる音までするようになり
さすがの俺も嫌悪感を通り越して不安や恐怖を感じ始めた。

本当に病院が潰れるのかも知れない
両親が離婚するかもしれない
これからどうなってしまうのか

練習でどんなに疲れ果てて眠りについても
夜中に目が覚めて眠れなくなってしまうほどだった。

そして突然その日はやってきた。

俺の中学一年の春休み
口論の末に父親が投げたティッシュボックスが母親の顔に当たり怪我をしたことが決定打となり
母親が離婚を宣言し
夜逃げするように母親と子供三人で都内の母親の実家へ身を寄せた。

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