【禁断兄妹 外伝】銀の檻 金の鳥
第3章 回想
母親の実家には何度も来たことがあり
フランス人の祖父と日本人の祖母
二人は優しくいい人で
愛娘が子供を連れ夜逃げ同然で実家に戻って来るという事態にとても心を痛めているようだった。
母親と姉達は父親への怒りや憤りで興奮状態
勿論俺もショックは受けていたが
来るべき時が来たのだと
その頃には諦めがついていた。
俺と父親のコミュニケーションは開業を機にほぼ失われていたし
夫婦喧嘩の声をベッドの中で息苦しく聞き続けてきたことで
父親に対しても母親に対しても
尊敬や愛情は薄くなっていた。
当然の結果だ
二人とも自業自得だ
でも子供を巻き込むのはやめて欲しい
そんな風に思っていた。
ただ
あの大きな家に一人残された父親
病院経営がうまくいかなかったことでどんどん精神的に不安定になってしまったが
根は悪い人じゃない
姉達よりも俺を一番可愛がってくれた
サッカーを教えてくれた
そんなことを思い返した時に
少しだけ胸が痛かった。