赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
智side
翔「美味しかった。ごちそうさま♪」
胸の前で手を合わせ微笑むヤツ。
「満足したか?なら、さっさとうちに帰って寝ろ。」
テーブルの上の食器を手早く片付けた。
翔「泊まっちゃ…ダメ?」
「…だめ。」
翔「どうしても?」
「…どうしても。」
とんだヤツと関わっちまったな?と、内心ため息。
翔「じゃあ…いくら?」
「は?」
翔「言い値で払うよ?いくら出せば泊めてくれる?」
「…バカにしてんのか?」
翔「バカになんか…っ」
俺はヤツの襟首を掴み睨みつけた。
大きな瞳が、怯えたようにユラユラと揺れる。
俺はハッとして、襟元から手を離した。
翔「ごめん…なさい。」
「と、とにかく帰ってくれ。」
俺としたことが…こんなに怯えさせてしまった…。
何やってんだ…俺。
コイツと関わってしまったことを酷く後悔した。
あの時、どうして声をかけてしまったのか、と。
「ちょっと待て。」
よろよろ立ち上がり、身支度をするヤツに性懲りもなく声をかけてしまった。
「その服…弁償する。」
ヤツは伸び切ってシワくちゃになった襟元に目をやった。
翔「別にいいよ?捨てるから?」
が、俺はヤツの言葉を無視して俺の連絡先を書いたメモを握らせた。
「今日はもう遅いから都合のいい時間に連絡してこい。話ぐらいは聞いてやれるから。」
翔「…うん。」
ヤツはメモに視線を落としたまま頷いた。
ヤツが出ていって、
静かに閉じられたドアをぼんやり見ていた。
そして、ぼんやり見ながら関わらなければよかった、と思う気持ちの裏側で、
俺はまた、コイツとまた会えたら、なんて心のどっかで思い始めていた。