赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
「ねぇ、俺、オムライスが食べたい♪」
「お前の食いたいものなんて聞いてねえよ。」
結局、何だかんだで俺らはスーパーに来ていた。
「そんな怒んなくてもいいじゃん?」
「別に怒ってなんかねえ。面倒くさいだけだ。」
って、凄く機嫌悪そうだったけど、カート押しながら手慣れた感じであれこれ手に取って肉やら野菜やら色んな食材を確認しつつカゴの中に放り込んでた。
「もしかして、料理できるの?」
「もしかして、じゃなくてずっと一人だったから全部一人で出来ないとだめだったからな?」
「そうなんだ…」
何で一人なの?…今も一人なの?
聞こうとしたけど何となく躊躇われた。
他に誰かがいる気配もなかったし、多分今も一人なんだろう。
ま、俺には関係ないか…
レジを済ませ、こちらに向かって歩いてくる男の姿をぼんやり見ていたら、
両手に持っていた手荷物の一つを渡された。
「ヒマならコイツを持ってくれ。」
「あ、うん…。」
足早に出ていく男に続いた。
スーパーから出てすぐだったと思う。
俺が出てくるのを待っていた男と目があった。
「お前、家族となにかあったのか?」
「なんで?」
「で、なかったら、学校でいじめられてるとかか?」
「だったら…助けてくれる?」
俺の問いには答えず、男は踵を返した。
「オムライス…作ってやるから食ってけ。」
「いいの?」
遠ざかろうとする背中をしばし呆然と見つめる、俺。
すると、そんな俺に焦れたように立ち止まりまた男が振り返った。
「何ボケっと突っ立ってんだよ?生モノが傷んじまうだろが?」
「ご、ごめん。」
俺は小走りで男に追いつくと空いている方の手で、やはり空いている方の男の手を握った。
「ばっ…?!お、お前何してんだ?」
「何、って…手、繋ごうかな?って思って…」
が、乱暴に振り払われ、男はスタスタと歩いていってしまった。