赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
ほんのガキの頃、俺の両親の乗った車が居眠り運転のトラックに正面から衝突され、二人とも亡くなった。
事情があって、両親には頼る親戚もなく天涯孤独となってしまった俺は施設に預けられることになった。
だが、程なくして俺はとある筋に引き取られることとなり中学、高校と出してもらうことができた。
大学もその気があるなら、と、言ってくれたけどそれは丁重に断った。
別に、大学に行ってまで勉強したいことなんて無かったし。
その代わり、高校を出てから数年の間、海外に行きたい、と言うと渡航費用プラスαで工面してくれ、
帰国後も、こうして住むところまで世話してくれた。
流石に生活費までは申し訳なかったので、趣味の範疇でやってた絵が何故か世間に広く知られることとなり、それなりの収入もあったし断っていた。
て、いうか…ウザかったから。
「償わせてほしい」、なんて…
あの日、あの時、俺は死んだ父親の古い知り合いだとかいう人の家にいた。
年齢が同じぐらいの子どもの話し相手として連れてこられたらしい。
その日は午後からひどい雨が降っていて、
しかも、夕方に迎えに来るはずだった両親も仕事が長引いたとかでその家で夕飯を食べさせてもらい二人の到着を待った。
だが…
「あっ……つっ‼」
煙草を挟み持っていた指先の熱感に驚いて煙草を取り落とす。
どんだけぼんやりしてたんだ?ってぐらいにもう煙草はほぼ灰だけになっていて、新たに一本手に取り火を付けた。
ああ、思い出した。
アイツ、どっかで観たことのある顔だ、と思ったら、
『ねえ、また会える?』
あの日、あの家にいたガキにそっくりだったんだ。
ちょっとだけモヤモヤしたものが晴れた安心感からか、急な眠気に襲われ、
俺はそのままソファーに寝そべった。