赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
どのぐらいの時間が経っていたかなんて、そんなことあんまり気にしない質だったんだけど、
滅多と鳴らない俺のケータイが鳴動したことにビックリして時間をも確かめてしまった。
……2時……はぁ?
しかも、見たことない番号。
何とか寝ぼけた頭を奮い起こして記憶の糸を手繰り寄せる。
ひょっとして…?
あの服、捨てるからとかほざいてたけど、やっぱ惜しくなったか?
『あの……こんな時間にごめんなさい。』
「……いや。」
『もしかして怒ってる?』
「ああ、怒ってる。」
『…ごめん。』
「で?いくらだ?」
『え?』
「あの服の値段だよ?やっぱ、惜しくなったんだろ?」
『あっ…あの服はもう…』
何かゴニョゴニョ言ってたけど、そういうことではないらしい。
何なんだよ?!イラつくな💢
でも、昼間の感じからして、ちょっとメンタルにキテるっぽいな、って気もしてたし、勢いで連絡先教えたのもあるから、ある程度はしょうがねぇな?って思って付き合ってやることにした。
『その代わり…というか…お願いがあって…』
「…断る。」
『ま、まだ何も言ってないじゃん?』
「どうせロクなことじゃねぇんだろ?」
『き、決めつけないでよ‼』
そんなでけぇ声で出せんのか?ってボリュームで言われて、思わずスマホを耳から遠ざけた。
「オマエな…」
『ごめんなさい…つい…』
「まあ…いい。で、何なんだよ?」
『あ…うん……その…また、そっち行ってもいい?』
「あ?…まぁ…いいけど…」
『ホント?』
「ただし、俺は忙しいから相手できないかもしんねえぞ?」
『いいよ?全然。俺は構わないから?』
いやいや、俺が構うんだけど?
『明日も…あ、今日になるのか?行ってもいい?』
「は?」
『講義終わってからだから、夕方ぐらいになるかな?』
おいおい、それはもう決定事項なのか?
『じゃあ、講義終わった時にでも一回電話するね?』
理解の追いつかない俺を置き去りにしたまま、ヤツは電話を切ってしまった。