赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
翔side
今日の俺は誰の目から見ても変に見えてたと思う。
いつにもまして口元は緩みっぱなしだったし、足取りは軽かったし。
早く帰りたいなあ…
学食でぼんやりしていると、俺の向かいに誰かの気配がした。
「…何か用?」
潤「何か用…って…昨日の今日でそれはないだろ?」
スマホを弄っている俺の目の前に居座る男から目を逸し続けた。
潤「連絡待ってたんだけど?」
「誰からの?」
潤「…惚けんなよ?」
「惚けてないけど?」
鬱陶しい……たった1回、寝てやっただけでもう恋人気取りとか。
お前ぐらい顔面偏差値高かったら誰でも相手してくれんだろ?
奥の席に陣取ってた女子たちの色めき立つ声に松本は眉を潜めた。
「ファンは大事にした方がいいよ?」
それじゃ、と俺は奥の席に目配せをし席を立った。
潤「あっ?!ち、ちょっ…」
あっという間に集まった女子たちに松本は包囲されてしまった。
「じゃあ、あとはよろしく。」
笑顔で手を振ると、中には残念そうな顔のコもいたけど、
構わず俺は学食を後にした。
この後の講義、サボっちゃおうかな?
スマホを手にして、俺はあることに気づく。
そういえば、あの人の名前…聞いてないな。
あの人から貰ったメモを見ながら電話しただけで。
登録しとかなきゃ、と思って今さら気づいた。
ま、いっか。番号貰ってんだし?
また、会った時にでも聞けば。
俺はまだ登録もしていない番号に電話した。
が、いつまで経っても出てくれない。
かと言って、いきなり押しかけてもあの人が部屋にいるとは限らない。
それでも、行くだけ言ってみようとスマホをしまって歩き出す。
しばらく歩いていてスマホが鳴っていることに気づいて慌ててスマホを取り出し耳に当てると、
不機嫌そうにボソボソ喋るあの人の声が聞こえた。
『…もう学校終わったのか?』
「うん。だから、今からそっち行ってもいい?」
『…勝手にしろ。俺は寝てるから?』
「じゃあ、着いたらまた連絡するね?」
無言で電話を切られてしまったけど、
再び歩き出した俺の足取りは軽かった。