
赫い月、蒼い夜
第2章 動き出す心
こんな落書きみたいなやつがか?
改めてその「落書き」をマジマジと見た。
そんな俺の頭の上で、言ってる意味は分からないけど言葉がかわされる。
「あの…祖父が、あなたさえ良かったら絵の勉強が出来る場所を紹介してくれる、って言ってるけど?」
どうする?って、小首を傾げる姿は人形みたいに綺麗で、
俺はバカみたいな顔で彼女の顔を見つめてた。
「えっ…と…返事は…?」
はっと我に返った俺の顔は赤くなってたみたいで、人形のような彼女の顔が俺を見て綻んだ。
「い、いや…俺は勉強とか苦手で…それに言葉とか分かんねぇし…」
「大丈夫。私が教えるわ。」
結局…
「どうかね?捗っとるかね?」
「まぁまぁ…かな?」
「本当に良かったのか?学校に行かなくて?」
「言っただろ?学校はキライだ、って?」
爺さんは俺の隣に重そうに腰を下ろした。
「まぁ…このぐらい描ければその必要もない気もするが…。」
「…だろ?」
得意げに絵筆を走らせている俺の隣で爺さんは苦笑した。
「そんなお前さんにいい話を持ってきたんだが…」
「いい話?」
徐ろに爺さんはポケットから一枚の紙切れを取り出した。
「お前さん、個展をやってみないかね?」
「は?個展?」
「まぁ…個展と言うか…まあ、ある名だたる芸術家の個展に便乗させてもらう形でお前さんの作品を置かせてもらうんだが…。」
俺は耳を疑った。
「悪い話じゃないだろう?」
「悪い話どころか…俺みたいな素人の落書きみたいな絵とそんな有名人の作品を…」
「実はな…その本人が是非にと言ってきたんだよ?」
「え…?」
「私が彼と古い知り合い、と、いうこともあるからな?だが、私は彼とはずっと折り合いが悪い。それを承知の上で私にコンタクトを取ってきたんだ。その意味が分かるか?」
「でも俺…」
「もっと自分に自信を持て、サトシ。君の作品には光るものがある。」
