赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
家に帰りたくなかった俺はそのまま講義に出ることにした。
適当なサ店で簡単に食事を済ませ、適当な服屋で換えの服を買う。
それでも午後からの講義には全然余裕だった。
暇だなァ…。
もうちょっとホテルで寝てれば良かった。
手持ち無沙汰すぎてつい、ポケットのタバコを探してしまう。
あ…ライター……
『これ使え。』
無駄に綺麗だった、さっきライターを貸してくれた男の指先を思い出す。
顔立ちは……俺のこと高校生か、とか聞いてたけど、
アイツの方が俺より下だったりして?
俺はやっぱり無駄に整った顔立ちを思い出していた。
「……。」
…少し控えよう。
ついでに思い出してしまった老夫婦の顰めっ面までもが過った。
なのに、何故か足はさっきの公園に向かっていて、ちょっと笑ってしまった。
でも…
「え…?」
噴水の前に座り、小さなカメラであたりをパシャパシャ撮影している男がいた。
しばらくその様子を黙ってみていた俺だったが、
不意に、男が写真を撮るのをやめ、こちらを振り返る。
少し、驚いたような顔だったけどまた、何事もなかったみたいに写真を撮り始めた。
「アンタ、カメラマンなの?」
「まさか?」
男が覗き込んでいる、ファインダーの先には白い雲。
まあ…そういう写真を好きな人、って多いよな?
近くのベンチに座ってボケっとしてると男が話しかけてきた。
「お前…ヒマなのか?」