赫い月、蒼い夜
第1章 愛を探して
「お前…まだ、いたのかよ?」
ウンザリしたような言葉に振り返る。
気付けば展望台のような窓からは強い西陽が差し込んでいて、呆れ顔でタバコを吹かしている男を照らし出していた。
「ほんとに良かったのか?こんなことにいて?」
「それよか、終わった?」
「え?いや…まだ…」
「息抜きしてんだ?」
「まぁ…そうだな…って、いい加減帰れよ。」
「えー?!いーじゃん、別に。」
「あのなぁ…初対面の人間の家に居座るとか…」
「顔見知りでしょ?」
「今日会ったばっかだろ?」
「2、3回ぐらい会ったような気がするけど?」
「…勝手にしろ。」
男がフーッと煙を吐く。
「ねぇ、お腹空いた。」
「じゃあ、帰ってメシ食え。」
「一緒に食べよ?」
「俺はいい。」
俺は鞄を持ち、携帯灰皿でタバコを消す男の脇を早足ですり抜け、玄関に向かった。
「お、おい?」
「…やっぱ帰る」
俺は何故か狼狽えている男の視線を感じながら靴を履いた。
「何か気に障ることを言ったのなら…ごめん。」
振り返ると、男はただでさえ下がった眉が印象的な顔立ちなのに、さらに眉尻を下げ情けない顔になっていて、
俺は思わず吹き出してしまった。
「な、何だよ?」
今度はその顔のまま眉根を寄せる。
「何だか忙しいなあ?と、思って?」
「はぁ?」
笑いを堪える俺の様子に、あまりいい意味ではないことが分かったんだろう。
男は「勝手にしろ」と小声で吐き捨てた。