このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第4章 予期せぬ婚約
「何だか少し、元気がないようだね。疲れたかい?」
「ええ、少し……」
そう言って小さく微笑み返してはみせたものの、少しというのは嘘だった。
デビュタントの形式的なダンスを終えると、それから休む間もなくダンスの誘いを受け続けたのだから、私の疲労は相当なものだった。
「……どうやら、少しというのは嘘のようだね。無理は良くないよ、リディ。もう宿に戻って休むかい?」
「ええ……。ごめんなさい、お兄様」
隠していても、やはり兄には見抜かれてしまったらしい。申し訳なく思いながら眉尻を下げると、そんな私を見た兄は優しく微笑んだ。
「謝ることはないさ。こんなにも美しく着飾った姿を見れなくなるのは残念だけど、リディの体調の方が大事だからね」
「お兄様……」
「さあ、もう宿に戻ろう。おいで、リディ」
差し出された手にそっと自分の手を重ねると、私はそのまま兄に促されるようにして会場を後にしたのだった。