このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第4章 予期せぬ婚約
※※※
「……まあ! お兄様見て、あれは何かしら?」
「あれはジプシーのサーカス団だよ。どうやら、ちょうど帝都に滞在していたようだね」
翌日、帰り支度も程々に済ませた私は、兄と共に昼食を済ませるとその足で城下町へと来ていた。そこで目にするものはどれも新鮮で、私はその光景に心躍らせると瞳を輝かせた。
中でもとりわけ私の関心を奪ったのは、ジプシーと言われる移動民族によるサーカス団だった。
「あれが、サーカス団……。初めて見たわ」
ピタリとその場で足を止めた私は、目の前で繰り広げられてゆく光景に釘付けになった。
炎や紐などといった道具を用いた芸はどれも大変に素晴らしく、行き交う人々の足を次々に止めては、その周りに沢山の人集《ひとだ》りを作ってゆく。けれど、私を含めた多くの人々の目を惹きつけたのは、綺麗な衣装を身に纏《まと》いながら華麗なステップを踏む、とても美しい踊り子の姿だった。
「なんて綺麗なのかしら……」
ポツリと小さく声を漏らすと、美しく舞い踊る踊り子の姿を見て感嘆の息を漏らす。
初めて目にするジプシーのダンスとは、私が今まで学んできたどのダンスとも異なり、とても自由で生き生きとして見える。それはまるで、光の妖精が喜びを体現しているかのように眩《まばゆ》く、見る者の心を惹きつけて止まない。
軽やかなステップを踏む踊り子の姿を見つめながら感心していると、その先にチラリと見えた一組の男女の姿に驚き、私は思わずその瞳を見開いた。
───!!
一瞬で見えなくなってしまったその姿に、私は焦って首を動かすと辺りを見回した。
そんな私の様子を隣で見ていた兄は、不思議そうな顔をすると口を開いた。
「リディ、どうかしたのかい?」
「──!? ……いいえ、なんでもないの。知り合いの姿が見えたような気がしたのだけれど……私の勘違いだったみたいだわ」
自分に言い聞かせるかのようにしてそう答えると、兄を見上げて小さく微笑む。そんな私を見て微笑み返してくれた兄は、サーカス団へと視線を戻すと再び口を開いた。
「ほら見てごらん、リディ。火の輪潜りをしているよ……凄い芸だ」
「ええ、本当に……凄いわ」
そんな返事を返しながらも、トクトクと高鳴る胸に心の落ち着かない私は、どこか遠い気持ちのまま目の前の光景を眺めた。
「……まあ! お兄様見て、あれは何かしら?」
「あれはジプシーのサーカス団だよ。どうやら、ちょうど帝都に滞在していたようだね」
翌日、帰り支度も程々に済ませた私は、兄と共に昼食を済ませるとその足で城下町へと来ていた。そこで目にするものはどれも新鮮で、私はその光景に心躍らせると瞳を輝かせた。
中でもとりわけ私の関心を奪ったのは、ジプシーと言われる移動民族によるサーカス団だった。
「あれが、サーカス団……。初めて見たわ」
ピタリとその場で足を止めた私は、目の前で繰り広げられてゆく光景に釘付けになった。
炎や紐などといった道具を用いた芸はどれも大変に素晴らしく、行き交う人々の足を次々に止めては、その周りに沢山の人集《ひとだ》りを作ってゆく。けれど、私を含めた多くの人々の目を惹きつけたのは、綺麗な衣装を身に纏《まと》いながら華麗なステップを踏む、とても美しい踊り子の姿だった。
「なんて綺麗なのかしら……」
ポツリと小さく声を漏らすと、美しく舞い踊る踊り子の姿を見て感嘆の息を漏らす。
初めて目にするジプシーのダンスとは、私が今まで学んできたどのダンスとも異なり、とても自由で生き生きとして見える。それはまるで、光の妖精が喜びを体現しているかのように眩《まばゆ》く、見る者の心を惹きつけて止まない。
軽やかなステップを踏む踊り子の姿を見つめながら感心していると、その先にチラリと見えた一組の男女の姿に驚き、私は思わずその瞳を見開いた。
───!!
一瞬で見えなくなってしまったその姿に、私は焦って首を動かすと辺りを見回した。
そんな私の様子を隣で見ていた兄は、不思議そうな顔をすると口を開いた。
「リディ、どうかしたのかい?」
「──!? ……いいえ、なんでもないの。知り合いの姿が見えたような気がしたのだけれど……私の勘違いだったみたいだわ」
自分に言い聞かせるかのようにしてそう答えると、兄を見上げて小さく微笑む。そんな私を見て微笑み返してくれた兄は、サーカス団へと視線を戻すと再び口を開いた。
「ほら見てごらん、リディ。火の輪潜りをしているよ……凄い芸だ」
「ええ、本当に……凄いわ」
そんな返事を返しながらも、トクトクと高鳴る胸に心の落ち着かない私は、どこか遠い気持ちのまま目の前の光景を眺めた。