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このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜

第4章 予期せぬ婚約




「っ、……お父様。お兄様だって、まだ婚約されていないわ」
 
「ああ……、それには私も困っているんだ。沢山の申し入れが来ているというのに……。ユリウスは任務で忙しいと言って、全く関心を持とうともしない。全く、どうしたものか……」

「それなら、お兄様の婚約が決まってからでも……」

「リディアナ、お前は私を困らせないでおくれ。お前に立派な嫁ぎ先を選んでやるのが、親である私の務めなんだ」


 困ったように微笑む父の姿を見て、それ以上何も言うことができなくなってしまった私は、握りしめた手にキュッと力を込めると固く口を結んだ。
 決して父を困らせたいなどというわけではなく、ただ、私は心の準備ができていなかっただけなのだ。

 貴族の娘である以上、いつかは父の決めた相手と結婚する覚悟はしていた。それが今まで大切に育ててきてくれた両親への恩返しになるのだから、そんなことに反抗しようだなんて思ったことはない。
 けれど、この胸のつかえは一体なんだというのか──。
 
 ウィリアムへの断ち切れない想いにツキリと胸を痛めると、私は固く閉ざした口をゆっくりと開いた。


「──わかりましたわ、お父様」


 あえかな微笑みを見せながらそう答えると、嬉しそうに微笑んだ父は満足気に頷いたのだった。

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