このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜
第4章 予期せぬ婚約
※※※
それから再び父に呼ばれて執務室へと訪れたのは、五日後のことだった。
「リディアナ。お前の嫁ぎ先のことだが、スペンサー子爵はどうかと思ってね」
予想していた通りの話しの内容にドキリと鼓動を跳ねさせた私は、膝の上に重ねた自分の両手をキュッと握り締めた。
父の言うスペンサー子爵といえば、辺境の広大な土地を収めるハプスブルク伯爵の嫡男であり、結婚相手としては申し分ない。それどころか、何の取り柄すら持ち得ていない私などには、身に余る程のお相手だといえる。
私の為を思って真剣に考えてくれたのだと、父のその思いには本当に感謝する他ない。
けれど、いよいよ突き付けられてしまった現実を前に、私の胸は張り裂けそうな思いでいっぱいだった。
辺境の土地にあるハプスブルク家に嫁ぐこととなれば、両親や兄にでさえ頻繁に会うことは難しくなるだろう。そして勿論、ウィリアムとも──この先一生、会うことはないのかもしれない。
「ここより遠く離れた土地にあることを考えると、リディアナに中々会えなくなるのは寂しいことだが……。スペンサー子爵は、実直でとても優しい方だと噂に聞く。彼と結婚すれば、必ずやお前も幸せになれるだろう」
「ええ、お父様……」
デビュタントで少しばかり挨拶を交わした程度のものだったけれど、スペンサー子爵はとても物腰の柔らかい優しそうな方だった。きっと、父の言うように彼と結婚すれば幸せな家庭が築けるのだろう。
(これでいいのよ、リディ……)
このまま父の言うようにスペンサー子爵と結婚して、いずれ子供を授かり温かい家庭を築いてゆく──それが私の幸せなのだ。
そう自分自身を納得させると、嬉しそうな笑みを浮かべる父に向けて私は小さな微笑みを返した。
それから再び父に呼ばれて執務室へと訪れたのは、五日後のことだった。
「リディアナ。お前の嫁ぎ先のことだが、スペンサー子爵はどうかと思ってね」
予想していた通りの話しの内容にドキリと鼓動を跳ねさせた私は、膝の上に重ねた自分の両手をキュッと握り締めた。
父の言うスペンサー子爵といえば、辺境の広大な土地を収めるハプスブルク伯爵の嫡男であり、結婚相手としては申し分ない。それどころか、何の取り柄すら持ち得ていない私などには、身に余る程のお相手だといえる。
私の為を思って真剣に考えてくれたのだと、父のその思いには本当に感謝する他ない。
けれど、いよいよ突き付けられてしまった現実を前に、私の胸は張り裂けそうな思いでいっぱいだった。
辺境の土地にあるハプスブルク家に嫁ぐこととなれば、両親や兄にでさえ頻繁に会うことは難しくなるだろう。そして勿論、ウィリアムとも──この先一生、会うことはないのかもしれない。
「ここより遠く離れた土地にあることを考えると、リディアナに中々会えなくなるのは寂しいことだが……。スペンサー子爵は、実直でとても優しい方だと噂に聞く。彼と結婚すれば、必ずやお前も幸せになれるだろう」
「ええ、お父様……」
デビュタントで少しばかり挨拶を交わした程度のものだったけれど、スペンサー子爵はとても物腰の柔らかい優しそうな方だった。きっと、父の言うように彼と結婚すれば幸せな家庭が築けるのだろう。
(これでいいのよ、リディ……)
このまま父の言うようにスペンサー子爵と結婚して、いずれ子供を授かり温かい家庭を築いてゆく──それが私の幸せなのだ。
そう自分自身を納得させると、嬉しそうな笑みを浮かべる父に向けて私は小さな微笑みを返した。