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このインモラルで狂った愛を〜私と貴方の愛の手記〜

第4章 予期せぬ婚約




 ───コンコン


「ウィンチェスター卿がおいでになられました」


 傍《わき》に控えていた使用人が中に向かって声をかけると、静かに開かれてゆく目の前の扉。その先に見えてきた人物の姿を捉えて僅《わず》かに瞳を細めると、私は懐かしさと喜びから目頭を熱くさせた。

 窓から溢れる陽射しに照らされて輝く白銀の髪をサラリと靡《なび》かせると、こちらに向けてゆっくりと振り返ったウィリアム。その姿は相変わらずの美しさで、思わず息を呑んだ私はその場に立ち尽くしてしまった。


「これはこれは、ランカスター卿! 随分とお久しぶりで! 元気にされていましたか?」

「お久しぶりです、ウィンチェスター卿。この通り、変わらず元気に過ごしています」

「それは良かった! さあさあ、どうぞこちらにお掛け下さい。……リディアナ。そんなところに突っ立っていないで、お前もこちらに座りなさい」


 嬉しそうな笑顔でウィリアムをソファへと案内すると、扉の前で立ち尽くしている私に向けて声を掛けた父。そんな父の声でハッと我に返った私は、急いでソファへと近付くとウィリアムに向けて挨拶をした。


「……お久しぶりです、ランカスター卿」


 気不味さからどこか伏せ目がちの瞳でウィリアムの様子を伺うと、そんな私の態度を気にするでもなく柔和《にゅうわ》な微笑みを浮かべたウィリアム。そっと私の手を取ると、そのまま優しく口付ける。
 その姿は相変わらずの優雅さで、触れ合う素肌からウィリアムの体温を感じ取ると、ドキリと鼓動を跳ねさせた私の頬はほんのりと赤く色付いた。


「久しぶりだね、リディ。……とても美しく成長していて驚いたよ」

「っ、……そ、そんなことありませんわっ!」


 恥ずかしさからパッと繋がれたままの手を離すと、クスリと声を漏らしたウィリアムは何事もなかったかのようにソファへと腰を下ろした。


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