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ほしとたいようの診察室

第6章 回想、はじめまして


春。



満開の桜を堪能する間もなく、小児科での勤務は始まった。

初日は優先生とともに朝の回診を行いながら、入院患者の子どもたちに挨拶を済ます。


その合間に、事務的な話のやりとりもある。


「まあ、知ってると思うが、どこも医師は人手不足。俺たちは病棟と外来だけじゃなく、年に一回大学附属の中高一貫校に、健康診断にも行かなくてはならない」

「今月中ですか?」

「来月……あー、もう今月か。まだ渡してなかったな、すまない。あとで年間と月間のスケジュールをやろう」

頭を掻きながら、手元にあったスケジュールを開いて深いため息をつく。
優先生の中ではまだ暦がめくられず、3月だったらしいことを察する。日付感覚が狂うのがこの仕事の常だ。


「ありがとうございます! あ、もしかして共有のフォルダに入ってます? 勝手に見てよければ確認しときます!」

見るからに忙しそうなのに、俺がこれ以上仕事を増やしてはいけない、と感じる。

「……そうしてくれると助かる。今年はこの健診に、小児科から俺と陽太先生、内科から3人、産婦人科から1人、行くことになってるから、よろしくな」

「承知しました!」

「あとは……」





医師は3年目とはいえ、小児科医は1年目。
優先生の背中を追いながら、廊下を歩きメモをしていく。




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