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ほしとたいようの診察室

第6章 回想、はじめまして



俺は、絵に描いたような問題児っぷりを目の当たりにする。

早産の早生まれ。確かに体は同じ歳の子どもたちより小さいけれど、なんとなくそのパワーの強さは、出立ちで伝わってくる。





「……おはよう、のんちゃん」

言いたいことを全て飲み込んだ優先生が、のんちゃんにひとまず挨拶をする。


近づくと手際良くカニューレをのんちゃんの鼻につけ換えながら、のんちゃんの指先にパルスオキシメーターを挟む。



「あ! うーちゃんにつけてたのに」



と、のんちゃんは唇を尖らせて、もう一度カニューレを外すもんだから、俺は思わず笑ってしまう。

どうやら、うさぎのぬいぐるみの名前は『うーちゃん』らしい。





「こーら。これは、おもちゃじゃないよ。先生、昨日外さないでねって言ったよな?」

「だって、はずれちゃったんだもん!」

「外れちゃったら、遊んで良いのか? 誰か来てねのボタン、押してって言ったよな?」



話しながらも優先生は、真剣な顔をしてのんちゃんの顔色を見たり、手足を触って温度を確認したりしていた。



「だって……」




「しーっ、静かに。ちょっと先にもしもしさせて」


胸と背中の音を一息にきいて、


「ん。喘鳴なし。外して酸素98%か。……まぁ、一旦、止めてもいいか……」

と、優先生は諦め気味に呟いた。




のんちゃんは、満足そうに笑う。優先生が呟く、その意味をなんとなくわかっているようだった。





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