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ほしとたいようの診察室

第7章 回想、主治医の苦悩



飲んでいたコーヒーを吹きそうになるのを堪えたら、気管に入って咽せた。



……もう勘弁してほしい。



優先生がニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、俺の背中をバシバシ叩く。一応、タッピングしてくれているらしいが、力が強いのは少し冗談が混じっているからか。


「ゲホッ……すみません……誰ですか、そんなこと言ってたのは」


咽せながら、なんてことのないように聞いたつもりだが、充分、焦りがでてしまう。



「吹田先生。……が、外来の患者さんから聞いたってさ」



うわぁ、よりによって吹田先生の耳にも入っているのかと、げんなりする。どんなイジられ方をするか、わかったもんじゃない。
困り果てた俺を前に、嬉しそうにする吹田先生が目に浮かぶ。


「まあ、とにかく。お姫様は外に出られてご満悦だったみたいだな。花冠は病室に大事に飾ってあるし」


「それは、よかったです。そういえば、これ」



俺は、医学書に挟んであった栞を見せた。
昨日、のんちゃんからシロツメクサの指輪をもらったあと、押し花にして栞に仕立てたのだ。


「のんちゃんから、初めてプレゼントを貰いました。シロツメクサで、指輪を作ってくれて。……びっくりしたことに、ちゃんと左手の薬指にはめてきたもんだから」


苦笑いしながら、手の中で栞を弄ぶ。


「あー、妙に大人びたところあるよなぁ。のんちゃんは」


のんちゃんのそういうところは、優先生にも心当たりがあるらしい。



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