戦場のミハイル
第2章 市街戦での孤立、息をひそめて生還せよ!
「ごめん、ちょっと眠ってしまってた!」
次の定時チェックがおとずれたとき、ミハイルは声をだした
「……ようやく目が醒めたか、アンタもこんな寒いなか、よく眠れたもんだね」
「……ああ、本当に……、身体が冷え切ってしまったね…」
ふたりは白い吐息を吐き出しながら寒さに凍えていた
北部地区の寒さは凍てつく気温だ
外気は氷点下だ
「……わたし、寒いのはもう限界だよ…」
「ナスチャ?大丈夫か?
……て、大丈夫なワケ無いよな、ボクもなかなか厳しいよ、でもヒーターは命取りだ」
「わかってる、耐えるしかないよ、
……でも、心が折れそう……」
孤立して何時間経ったことだろう?
ただセンサーには敵が離れていく様子も無い
向こうもジッと獲物を狙っているに違いない
中途半端な判断をしては隠れた意味がない
それに、今から単騎で本隊と合流することも難しいだろう
ここは完全に気配を消してしまうしかない
機体は動かせなかった
「ナスチャ、大丈夫だよ、きっとボクらは戻れるさ
……ナスチャ? ナスチャ?」
声をかけらていたアナスタシアだが、意識は朦朧として返事をする気力も無かった
ミハイルは意を決して、上段のシートから身を翻し、下段のアナスタシアのシートへ移動する
チラリとアナスタシアの目線がミハイルのほうを向くが、声も出ない
完全に寒さに負けていた
「……ナスチャ! ナスチャ、大丈夫、大丈夫だから!」
ミハイルは自分自身に呪文をかけるかのように繰り返す
彼女の肩を、腕をさすってやる
防寒着の上からさすってやっても熱が伝わるわけではない、しかしこうするぐらいしか出来なかった
アナスタシアの視線は動くものの、あまりにも反応が薄い
見かねたミハイルは自分から防寒着のファスナーを下ろしていった!
「……な、なに? 何するつも…り……?」
アナスタシアがようやく声を発するが、渇いた唇が裂けてしまった
「ナスチャ、怒らないでよ……、これが賢明だ」
ミハイルは防寒着をアナスタシアに被せて、自分は肌着だけの姿になった
「……ごめんよ、無事に帰ったら殴っていいから」
ミハイルはアナスタシアの防寒着に手をかけた