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戦場のミハイル

第2章 市街戦での孤立、息をひそめて生還せよ!


「な…なに……? どうするつもりなの?
ミーシャ!」


アナスタシアは裂けた唇の痛みに耐えながら動揺している

しかし、あまりにも寒くて思うように動けない


ミハイルは力無く抵抗するアナスタシアを無視して、防寒着とさらに中に着込んだネックトレーナーまでも強引に脱がせにかかる


「ち、ちょっと……、本気なの?」


彼女を上下の肌着だけにするとミハイルは彼女のコックピットシートに滑り込んだ


横から割り込んでいく


二人分の防寒着を重ねて毛布のようにくるまって、ふたりは身を寄せ合った



「……アンタの身体も冷たいよ、ミーシャ」


「そりゃあ、僕だって心底冷え切ってるさ
でも、きっと少しはマシだろ」


アナスタシアは返事はせず、ミハイルの行動を受け入れた


肌着のまま残してくれたのは彼女の自尊心を尊重してのことだろう


正直言って今回のペア組みに関してアナスタシアは納得していなかった


貴重な男性クルーなのは理解できるが、まわりの女性陣の黄色い歓声を率いてる光景をよく見かけていたのでミハイルへの印象は最悪だった


特に彼に何かされたわけではないが、取り巻きの多さに辟易する


よりによってミハイルと組むことになるとは、アナスタシアのストレスはマックスまで上がっていた


ペアを組んでから、特に問題は無かったものの、第一印象が良くなかったため、アナスタシアは心を開かなかったのだ


仕事は卒なくこなすし、無駄口もきかない


ときおり言葉に出さない気配りも散見された


でも、きっと女慣れしてるからでしょ!


アナスタシアは意固地になり、単独行動でも自分の主張を優先させてきた


彼にも主張があるのかもしれないが、提案を聞いてやることなんてとんでもない!


そんなチグハグな関係のまま戦闘に入ってしまい、孤立してしまった


敵だけでなく、寒さからも追い詰められたふたりだが、


こんな状況になっても、まだ自分を立ててくれているミハイルに、ようやくアナスタシアは自分が恥ずかしい女だと気付かされてしまったのだった


これまでに彼に非があったことなんてあったか!


アナスタシアは極寒のコックピットの中でも自分の身体を暖めようとしてくれている相棒に感謝するしかなかった…


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