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戦場のミハイル

第1章 辺境の村、その集落に未来はない

「ミーシャ!お疲れ様」

「ニカ、迎えに来てくれたの?」

ミハイルは作業を終わらせて帰りの準備を始めた

刈払機の燃料タンクはすでに無くなっていたが、数回ポンプを押してやるとキャブレター内部の残りで再びエンジンがかかった

数回同じ作業を繰り返し、ポンプ内、チューブ内、キャブレター内のすべての燃料を燃やしてやる

こうしてやらないと燃料は劣化して詰まってしまう


ベロニカも他の道具の片付けを手伝う


ミハイルが機械に使うCRCスプレーを直接指にかけるのを見て怒る

「ミーシャ!またそんなので洗って!指がガサガサになるわよ!」

「仕方ないよ、石鹸でこの油汚れは落ちないんだから……」

油汚れを落とすには粘度の低い油スプレーを使うしかなかった

もちろん皮膚には悪い


ふたりは納屋のある物置小屋まで荷台を移動させ、そこからはベロニカが乗ってきたソリッドステートバッテリーのトラックに乗り込んだ


「今日は姉さんが帰ってきてるのよ」

「そうか、赤ちゃんもう大きくなったかな~」

ベロニカの姉は結婚して隣の村で暮らしている

旦那も徴兵され村には帰っていなかった

彼女はミハイルの幼い頃の憧れの女性だった


「赤ちゃんじゃなくて姉さんに会いたいんでしょ」

「もうボクのそばにはニカが居るじゃないか」


トラックは溜め池のほとりに停めるとベロニカが拗ねたような態度をとりながらミハイルの手を握る


「……わかってるけど」

ミハイルは身を寄せて口づけを交わした



ふたりはまだ夕暮れの明るいなかでも気にせず服を脱ぎ、愛し合った


こんな田舎の小さな村では誰にも見られることはなかった


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