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戦場のミハイル

第6章 ニコライ議員の私邸


通院の帰り道

ガリーナは路地を壁伝いに歩いていた


ここは一直線の壁が続く道で帰宅までの最短ルートだ


長い壁が続くので今まで何かしらの施設の壁だろうと思っていた


老婆に声を掛けられるまでは



同じ方向にゆっくり歩く老婆を追い抜こうと歩みを早めたとき、ふたりの近くを黒塗りの車列が通り過ぎていく


老婆は誰に言うたでもなくぼそりと声をだした


「おや、ニコライ様がお戻りになってるようだね…」



ガリーナは他の誰かに声を掛けたのではないかとあたりを見回すが他に誰も居ない


無視するのも失礼だと思い言葉を返してみた



「…ニコライ様?」


「アンタ知らないのかい?ニコライ様はここいら一帯を昔から治めていらっしやるミャスコフスキー家出身の議員さんだよ、今はお父様の代を継いでいらっしゃる
 この大きなお屋敷がニコライ様の私邸だよ」


「へぇ、議員さん……、そうなんだ、てっきり施設か何かの敷地だと思ってました
 立派なお屋敷なんですね」



「ウチの孫娘がここで給仕として働いているんだ、他にも農地やら工場やらニコライ様の土地で働かせてもらっている人は、この〈エカテリンブルク〉にはたくさん居るだろうね」


話しを聞くと、最近物騒になってきたためか警備兵を使いたいらしい
 政敵の警戒が無視出来ないレベルにまで及んでいるのだそうだ

 邸宅には御婦人や小さなお子様もいらっしゃるので念には念をいれておこうか、と話しになっているらしい


老婆と別れたあとガリーナは考えた

今すぐ前線で働くのはムリかもしれないが、警備を主とした近衛兵なら雇ってもらえるのではないか?


老婆から孫娘へ口添えしてもらおうか、振り返ったがすでに老婆の姿はなかった…


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