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戦場のミハイル

第6章 ニコライ議員の私邸


ニコライ邸の駐在近衛兵として勤務して1年

ガリーナ・ウワロナとマイヤ・プリセツカヤは歳が近いこともありすぐに打ち解け合うまでになった


また邸宅で暮らす執事やメイド、給仕たちとも仲良くなっていった


旦那様は私邸には戻られる事は少なく、家のことは執事と家政婦長が取りまとめ、夫人を支えている


ニコライ夫人ことマリア・パブロビナ・ミャコフスカヤはまだ小さな娘のそばにいるため、邸宅の細かいところまで見きれない


先代から引き継いだ執事はとにかく問題の起こらぬよう最善の努力をしていた


「お二人が駐在警備に来ていただくようになってもう1年ですか、いやはや昔から一緒に暮らしていたかのような馴染みようですな!
 今後とも宜しく頼みますよ」

初老で長身の執事はとにかく普段から忙しい


声を掛けてくれたのは嬉しいが、返事も聞かず去ってしまった


「気にしなくていいさ、彼は昔からせっかちなん性格なんだよ、さぁ警備はそれぐらいにしてお茶にしましょう!シフォンケーキを焼いたからね!わたしはメイドたちを呼んでくるから」


小太りの家政婦長は執事と長い付き合いだそうだ


夫婦のような掛け合いをよくする


席につくとすぐに熟女のメイド長と若いメイドたちが集まってきた


みなでテーブルを取り囲み午後のティータイムだ


ガリーナはここは本当に幸せな場所だ、としみじみ感じるのだ


この幸せを守るため、やはり自分は早く最前線へ飛び出したいと願ってしまう


平和な暮らしは自分には合わない


いつかこのお屋敷を離れる日が来るだろう


その日は寂しい時でもあるが、守れる喜びでもあるだろう


毎日当たり前のように行われるティータイムだが、ガリーナにはこのようなゆったりした時間を過ごしたことは初めてなのだ


「どうしたのリーニャ?心ここにあらずみたいな顔しちゃって!」


ガリーナに声を掛けたのは若いメイド娘ソーフィア

あの一年前、たまたま話しをした老婆の孫娘だ


「……なんでもないよソーニャ!ほら、早くお茶を飲み干して!お代わりがあるよ」


そこに同僚のマイヤ・プリセツカヤが茶々を入れる


「どうせまた〈あぁ〜!戦場と違ってここは幸せだぁ〜!〉て思ってんのよ」


「マーニャ!」


皆は笑顔になるのだった…


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