戦場のミハイル
第6章 ニコライ議員の私邸
その日の夜
バチン、と激しい音とともにニコライ邸は突然の停電に襲われた
「きゃあッ!」
「なにッ?どうしたのッ!」
屋敷の様々な場所から叫声が飛び交う
照明はすぐに復旧した
議員の邸宅には万が一に備えて地下に緊急用電源が備わっていた
家政婦長のばあやが慌てて議員夫人の部屋へ駆けつける
「奥様!」
ばあやが部屋に入ったとき、すでに先客が部屋に訪れていた
近衛兵ガリーナ・ウワロナだ
「大丈夫、奥様もイーラもご無事だ」
「はぁ、良かった……、リーニャよく暗闇の中を真っ先に駆けつけてくれました」
「非常電源があって良かった、執事さんと話してきます、家政婦長は奥様をお願いします」
ガリーナが部屋を出ていこうとすると小さな女の子に手を握られた
「もう行ってしまうの、リーニャ?」
「イーラ、もう電気が点いたから怖くないよ、ママとばあやもそばに居てるからね」
ニコライ議員の一人娘イリーナはわかったとばかりにコクンと頷いた
マリア夫人も声を掛ける
「リーニャ、本当にありがとう、気をつけて」
ガリーナは一礼して部屋を出た
吹き抜けの階段を抜けて大広間へ走る
大広間で執事と落ち合えた
「おお、リーニャ!こちらへ来てください」
ふたりは足早に厨房の裏手にまわる
そこにはこじ開けられた配電盤が見つかった
「意図的に停電にさせたようです」
「陽動かもしれませんリーニャ、皆を広間に集めましょう」
「そうですね、いや、広間に集めるのは使用人の皆さんだけにしましょう
奥様とイリーナ様に近付く者を制限しましょう、ふたりには私たち近衛兵が付きます
使用人全員を広間に集めておいて下さい
外部からの侵入者が居ても対抗出来ますし、万が一内部の者だとしても全員を集められていたら単独行動が取れなくなるはずです」
「内部の者かもしれないとでも…?」
「万が一です、こちらも軍の総監部に応援依頼をかけておきます」
「……そこまでしなくても……、まだ何の実害も出てない」
「いや、この対応を犯人に見せつける為です、少しコトを大きくしておいたほうが次の牽制になります」
「わかりました、では」
ガリーナが再びマリア夫人の寝室を訪れたときには同僚のマイヤが警護してくれていた