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戦場のミハイル

第6章 ニコライ議員の私邸


階段から降りてきたガリーナにアンナ夫人が歩み寄ってきた


「リーニャ、紹介したい人が居るの」


「ええ、是非」


ガリーナは違和感があった


アンナ夫人の頬は紅潮し、瞳はとても潤んでいる



まるで恋人を紹介するかのようだ



〈まさか夫人の愛人でも招き入れたんじゃないだろうな……〉


「リーニャ、こちらはコーリャの古くからの友人なの、私たちの縁を結び付けてくれた人でもあるのよ

 議員になるもっと前からの私たちの友人」


そう夫人に紹介された小柄な人物は深いフードを取り去ってコートを脱いだ


姿を現したのは意外にも若い男

少年のように見えるが、童顔なのだろうか


それよりも気になるのがコートの下

彼が着ていたのは古いタイプの軍服だった


階級は……


〈………中尉ッッ!?〉


 部隊の小隊か中隊規模の指揮官クラス!


ガリーナは瞬時に姿勢を正し、敬礼した!


「……し、失礼いたしましたッッ!」


「……いいよ敬礼は、今は勤務じゃないし
  ぼくはプライベートで来てるんだ」


目の前の少年のような風貌の〈上官〉は苦笑いしていた


「ふふふ、こちらはミハイル・グリンカさん
 私たちの大切なお友達なの」


「コーリャ……、ニコライ議員がまだ新人の砲撃士だったとき、 ぼくも同じ小隊に居たんだよ

 彼が退役してからも会ったりしててね、
 そのときコーリャをそそのかしたのさ」


そう言うとマリア夫人は顔を真っ赤にしてミハイルの背中を叩いた


「ミーシャ! 余計な事を言わないで頂戴!」


大人の話しが一段落したのを見計らってなのか、小さな娘イリーナはミハイルに抱っこをせがんだ


やさしく抱き上げてやるミハイル



そのふたりの姿を見てガリーナは〈似ている〉と思った


そして


そのことを考えると、血の気がひいたのだった


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