戦場のミハイル
第6章 ニコライ議員の私邸
午後のティータイム
マリア夫人と小さなイリーナ
そして来客のミハイル・グリンカを加えた3人が楽しげにまったりとした時間を楽しんでいた
その光景を遠巻きに見ている近衛兵ガリーナ
侍女のソーフィアもお菓子を持って来室してきた
「イーラも楽しそうね、やっぱり子供は笑っているほうがかわいいわ
それもこれもミハイル様のおかげね」
「ソーニャ、ミハイル様はよくここへ来るのかい?」
「ミハイル様? お仕事のお休みが長く取れただけしか来れないと思うけど……
そんなにしょっちゅうではないわ
前にいらっしゃったのはちょうど一年前かしら、そぉ、一年前のイヤな事件のとき以来だわ」
一年前、ちょうどガリーナがこの仕事に就いた頃
屋敷の数カ所に爆発物が見つかり、警備を強化したきっかけとなった事件の事だ
「リーニャやマイーニャたち兵隊さんが来る前、ミハイル様が数日間警備に当たってくれていたのよ、リーニャたちと入れ違いね」
「事件の前も来ていたんだろ?」
「ええ、イーラが生まれる前からのお知り合いですもの! ニコライ様だけでなく執事バトラーや従者ヴァレットとも旧知の仲だわ
ほら、またイーラが抱っこをせがんでいるわ
お兄さんだと思ってるのかしら」
「確かに……兄妹みたいに見えるね」
改めてミハイル・グリンカを凝視してみても中尉のような風貌に見えない
まだ新兵のようにも、いや入隊前の学生のような少年らしさが見て取れる
あの若さは異様だ、とガリーナは率直に思った
そして、
やはり何度見てもニコライ家のひとり娘イリーナは当主ニコライよりもミハイル・グリンカに似ている
ふわりとした癖のある毛
大きな瞳
本当にニコライ様の娘?
ガリーナはよからぬ考えから頭が離れない
「さぁ、リーニャ!ここを片付けたらわたしたちも向こうでお茶の時間にしましょう!
奥様とイーラはお休みになられると思うからミハイル様がついていらっしゃれば安心よ」
あとから別の侍女も加わり、夫人たちのティータイムは終わった…