
戦場のミハイル
第6章 ニコライ議員の私邸
ガリーナ・ウワロナは1階の厨房から2階の自室へ戻ろうと階段を上がっていった
ガリーナは確信していた
一年前、自分の部隊が全滅し、救助されたとき、その場にあの男は居たに違いない
彼は命の恩人になる
だが、まだ若いガリーナから見ればあの男は
〈上流階級の人妻に忍び寄る悪い間男〉
にしか見えなかった
「何かしら目的があって夫人に近づいてるに違いない」
そう結論づけた
彼は信用できない
不貞行為を見逃してやるほどガリーナは世間に慣れては居なかった
まだまだ若いのだ
駐在勤務出来るよう与えられた二階の部屋はガリーナとマイヤ・プリセツカヤの2名で同室にしてもらっていた
部屋に戻って彼の話しをしても、きっとマイヤは同意しないだろう
マイヤは若いオトコに甘すぎる、とガリーナは捉えていた
これはガリーナの独りよがりでもある
現にこの時代、数百年に及ぶ戦争のおかげで男性そのものが極端に少ないのだから
マイヤのように異性に媚びてしまう者も多いのだ
それでも…
この考えをしっかりマイヤに伝えておかなければ…!
あのオトコ、ミハイル・グリンカは信用ならない!
ガリーナは嫌悪感に支配されながら、自室にまで戻ってきた
