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魔法の玉

第2章 花火で盛り上がるグループの中にいる、先輩と後輩


 一人で思い出し笑いをしていたら、電話しに離れていた山内が戻ってきた……が、


「あああのっ、池辺先輩っ……!」

「山内、どうした? 顔色悪いぞ。お前、そんなに飲んでたっけ?」

「いえ、そうではなくて。実はさっきの電話、母親からだったんですけど……
 じいちゃんが……僕のじいちゃんが、危篤らしくてっ……!」

「ええっ!? あの、田舎から呼んで、こっちの病院に入院させているって話してた、お前の祖父がか?」

「はいっ……」


 俺も山内につられて、血の気がサァっと引いた。


「大変じゃないかっ! 間に合うのかっ?」

「ここからすぐ近くの病院なので、走って急げば、多分……」

「そうか。なら早く行ってやれよ。
 お前の大事なじいちゃん、なんだろ?」

「っ……はいっ」


 山内、今にも泣き出しそうだ。無理もない。大のじいちゃん子なら、尚更だ。


「したら僕、みなさんに一言断りを入れてきますっ」

「んなことを気にしてる場合かっ。みんなには、俺があとでちゃんと事情を伝えておくから、早く行けよっ」


 それに……すっかり出来上がっている酔っ払い達に言ったって、まともに話が通じるとは思えないしな。


「すみませんっ。ありがとうございますっ、先輩っ!」


 山内はぺこぺこしながら自分の荷物を抱えると、見物客を避けて走っていった。

 山内のヤツ、間に合うといいが……。


「はっはっはーっ! そーれっ、エーラヤッチャエーラヤッチャヨイヨイヨイヨイーっとなっ!」

「いよっ! 待ってました、大統領っ!」

「ぬははははーっ!」


 ……やれやれ。みなさん、ご陽気なことで。



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