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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 114 大原浩一本部長 ②

 だが、こうして今はここにゆかりがいる、ゆかりの存在がいる限りそんな内面的な会話はできないのだ。
 なぜなら、私と美冴はゆかりの前では、いや、会社の面々の前では、今朝始めて会話した事になっているからなのである。
 とても普通に話し掛ける事などは、特にゆかりの前では、今はできやしないのだ。

 なんとか大丈夫なのか…
 美冴の事も乗り掛けた船なのだ、全く知らん顔は出来ないのだが、こうしてゆかりがいる目の前ではどうすることもできないのである。
 歯痒い現実なのだ。

 だが、美冴は隣の越前屋朋美の足裏マッサージをしている武石健太を見つめてくるのだ。

 大丈夫、最悪は彼がいるから…
 その美冴の目が私には、そう受け取れるのである。

 そうなのか、そういうことなのか…
 
 だが、それはそれで私的には少しだけ面白くはない、という感情が湧いてきていた。
 つまりは少しの嫉妬心である。

 バカな、嫉妬なんて…
 この今、私が足裏マッサージをしているゆかりがいて、そして銀座の女の律子もいる、それなのに、きっかけはどうあれ僅かに二度程抱いた美冴に嫉妬心を抱いているというのか。
 胸がザワザワと騒めいてきた。

「ああ、本部長、ありがとうございます、もういいですよ」

「あ、うん、そ、そうか…」
 不意なゆかりのそんな声に、ふと、我に返った。

「大丈夫ですか、何かボーッとしてるみたいな…」

「あっ、いや、大丈夫だ、どれ、上野くんもしてやるぞ…」
 さすが勘の鋭いゆかりである、私の内心の僅かな動揺も微妙に察知したようである、思わず誤魔化す為に、上野くんにそう声を掛けたのだ。

「ええ、でも、そんな、まさか本部長さんに…」
 さすがに上野くんは遠慮をする。

「せっかくだからしてもらいなさいよ、これもいい機会だと思って…」
「はあ…」
 ゆかりのその言葉に上野くんも応じてきたのだ。

「そうだよ、遠慮するな、だが、セクハラじゃないからな」

 私がそう言うと…
「あっ、そういう捉え方もあるのかぁ、でも上野さん大丈夫よねぇ」
 と、ゆかりがそう云ってきたのである

「はい、ただ、わたしは本部長に足裏マッサージさせるなんて…」
 恐れ多くて…
 と、そう云ってきたのだ。

「ああ、それは心配するな、さあ…」
 




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