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シャイニーストッキング

第11章 絡まるストッキング10     連休最後の2日間…

 11 武石健太(11)

 その朝俺は道化師、ピエロになってしまった…

「み、美和…」

 テーブルの上にはその手紙と京都駅発の新幹線の指定席券が…
 ポツンと置いてあった。

 自分勝手にこの美和との京都旅行を…
 自分勝手な理由で、つまりは美和と蒼井美冴さんとの想いを天秤に懸け…

『キレイに整理してね…』
 と、いう美冴さんの言葉に、この京都旅行で一方的に美和に別れを告げる…

 そして…
 一人勝手にその事に対して悩み…
 自問自答を繰り返し…
 自虐し…
 自責の念を感じ…
 心を痛めてきていた…
 の、だが、いや、つもりであったのだが…

「まるでピエロじゃないか…」

 美和は…
 彼女はこの京都旅行を計画し、誘ってきた時に…

 そう、7月上旬だ…
 既にその時期には俺との別れを決意していた…

 それはこの帰りの…
 一人分の指定席券のこの一枚が証明していた。

 そしてそれは正解であり…
 なぜなら京都駅で新幹線の指定席に座ったら、既に京都駅の先から隣の席に人が座っていたから。

「あ、あのぉ、ちょっとすいません…」

「は?…」

「この隣の指定席って…いつ頃予約されましたか?」

「え、あ、確か7月のアタマあたりからかなぁ?」

「あ、そうですか、ありがとうございます…」

 俺は先に隣の席に座っていた人に…
 訊かざるを得なかったのだ。

 その答えによって…

 美和の決意の時期を否が応でも悟り…

 そして…

 自分の道化師、ピエロな想いのみじめさに…
 自分自身の間抜けさに、打ちひしがれてしまったのだ。

 だが…

 美和に対しての…

 自責の念、想いは消えはしなかった…

 全ては自分が悪いのだ…

 そう自虐する。




 だが…

 常に前向き…

 明るく生きる…

『いつも心に微笑みを…』
 を、座右の銘としている俺は…
 そういつまでも落ち込んではいない。

 いや、必死に心を奮い立たせ…

 切り替え、変えていく。


 そうだよ、結果的には、キレイに別れられたんだから…

『キレイに整理してね…』
 美冴さんの言葉通りになったのだから…

 どっちにしても、最後には俺から別れを告げた筈なのだから…

 そう思う事にしたのだ。


 そして…

 急に…

 美冴さんに逢いたくなった…



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